東京農工大学の瀧山先生をお招きして、MACSセミナーを開催いたします。 セミナーは二部構成になっておりまして、1部では機械学習の基礎を分かりやすく解説して頂く予定です。トピックは「身体の運動制御」ですが、データ解析一般に役立つ内容だと思いますので、奮ってご参加下さい。事前申し込みは不要です。
日時
2018年10月9日(火)1部(14:45~16:15) 2部(16:30~18:00)
場所
京都大学理学部3号館108号室
⇒アクセス 建物配置図(北部構内)【5】の建物
講師
瀧山 健氏(東京農工大学・准教授)
要旨
演題(1部):機械学習の初歩の初歩(線形回帰)と身体運動科学への応用
パートナーに買った誕生日プレゼントを思い浮かべてほしい。千円のプレゼントあげたときは全く喜ばず(むしろ怒られる)、奮発して一万円のプレゼントをあげるとまあまあ喜ぶ。払った金額をx、喜ぶ度合いをyとしたとき、回帰はxとyの関係性を調べる一つの手法である。適切な回帰手法を用いることで、百円のプレゼントをあげたらどんな恐ろしいことが起こるだろうか、三万円のプレゼントをあげたら一時間くらいは機嫌が良い状態が続くだろう、といった予測も可能となる。本発表では、線形回帰と呼ばれる機械学習の基礎中の基礎の回帰手法を紹介する。そして、線形回帰を用いることで身体運動科学に用いられる従来手法の欠点を解消し、利点を統合する手法となることを示す(参考文献: Furuki & Takiyama, 2017, Sci Rep, Furuki & Takiyama, 2018,bioRxiv)。
演題(2部):ベイズ情報統合と身体運動学習 -運動学習の統一理論モデル提案の試み-
実家の机の上に、見られたら困る写真を置き忘れた状況を想定しよう。明かりがついていれば信頼性が高い視覚情報に頼りその写真を探すであろう。明かりが消えているときは、信頼性が低い視覚情報と体性感覚情報の両方を駆使してその写真を探すであろう。ベイズ情報統合とは、このような信頼性に基づく情報統合の枠組みの一つであり、身体運動学習のいくつかの特徴を説明可能であることが示唆されている(参考文献:Kording & Wolpert, 2004, Nature、Wei & Kording, 2008,Jnp)。本発表ではベイズ情報統合とその身体運動学習への応用について紹介する。その後、ベイズ情報統合など複数提案されている身体運動学習のモデルを統一的に説明する、誤差の予測モデルについて紹介する(参考文献:Takiyama et al., 2015, Nature Com)。
開催報告
10月9日に東京農工大学の瀧山健准教授を招聘しMACSセミナーでご講演頂いた。氏は運動制御における神経科学研究の新進気鋭の理論研究者である。講演は計3時間の二部構成でお話し頂いた。一部では機械学習の礎として線形回帰周辺を学部生に理解できるようにご説明頂くと共に、それを発展させた氏の研究である運動制御における次元削減のトピックをご紹介頂いた。二部では氏の代表的研究である運動制御における予測的制御モデルをご紹介頂いた。学生達から多くの質問が飛び、大変に活発な議論が行われた。(加藤毅)